遺失物

電車の中に忘れ物をしたことはありますか?


あ!と思ったときは時すでに遅し。
ドアが閉まって次の駅へと向かう電車…

私も何度もやったことか。



駅員となり、日々届けられる落とし物の多さに驚く。
そして10円でも律儀に届けてくれる皆さまの良心に嬉しくなる。


お客さまから届けられた以上、「これは…ゴミじゃないかな…?」と思っても遺失物となり、システムに登録しなければならない。
色、カタチ、拾った場所、日時など事細かに入力していく。
結構時間のかかる、大変な作業である。


その作業量の多さに、「もうー!」と叫びたくなる思うこともあるが、もしかしたら探している人もいるかもしれない…!と自分に言い聞かせて、再びパソコンの画面に向かう。


自分にとっては不要なものであっても、
ある人にとっては必要なもので、時にはむしろ大切なものである事もあるからだ。

一つの方面からだけモノゴトを見てはいけないんだなと悟った。



遺失物のことでたまに揉めたりするのが、

ホームでお客さまから預かった遺失物を駅事務室へ運んでいるときに、落とされたお客さまが「あ、それ俺の!」と申告された時。

この場合であっても、すぐにお渡しはできません。

(登録作業も面倒だし、受け渡しにも書類を書いてもらって、確認して…と時間がかかるし、本音を言うとすぐに渡したほうが楽…!なんですが。笑)


本当にその方のなのか?
をきちんと確認しなければなりません。


「反応から見たらわかるだろ!」と思われるかもしれませんが、多くの方が利用される鉄道です。
何があるかわかりません。

一つの側面からだけモノゴトを見てはいけない。
…もしかしたら、勘違いされているかも。
…もしかしたら、他に申告される方がいるかも。

様々な可能性を考えなくてはなりません。

公共性の強い鉄道だから。


こういうところが、固いなあと言われる理由かなと思いますが、「これくらい大丈夫」と思ってやらなかったことが原因で、沢山の悲しい事故が起きています。それが現実です。
新しい事故を起こさないために、遺失物の取り扱いであっても、厳格に行っています。

どうぞ、お付き合いください。



この間も似たようなことがあり、
改札でお客さまに沢山のご意見を頂いた。

「俺のだって言ってるのになんで?」
「そこについた傷が証拠だよ」

それでもめげずに黙々と手続きを進める私。

なんとか引き渡し書類に記入をしてもらうも、
イラついていた、かつ少し酔っぱらっていたため
文字が荒れていて解読するのに更に時間がかかる…

それでも「早くしろ」と、罵倒は飛んで来る。

終了後、「くだらねえ」と言って精算レシートを投げつけて去っていかれたお客さまの後には静寂が残り、私も心の中で「くだらないよね、わかるよ」と思いつつ、涙が頬を伝う。


どの対応が、正解なのか。

改札で模索しながら、さまざまな問題と格闘しています。




さて今日も、制服や会社のパソコン、リュックサックまるごと…等、沢山の忘れ物たちが改札に届けられています。

盗まれずに来られてよかったねと思いつつ、検索に引っ掛かるように全力で登録します。

いろいろあるけれど
日本はまだ平和だなあ、と思います。




…忘れ物をしないのがイチバンなので、降りる駅が近づいたら準備をしてお待ち下さい。掛け降りは危ないよ!

…見つかって書類を書くときは、少し丁寧に大きめに書いて頂けると助かります!